赤岳(八ヶ岳)その2

山桜がピッケルを振りかざし、喜びの雄叫びをあげた!
足久保山岳会もとうとう、ここまで成長した。最高の天気も大きな味方となった。
登りには体力を使い大変だが、注意しなければならないのは、むしろ下りだ。赤岳から稜線を地蔵尾根に向けて進んだ。稜線上は風が強いが、この日は比較的穏やかであったろうと思う。
下りもアイゼンをしっかりきかせ、慎重に下りていった。登りでの疲れはあるものの、山桜の歩みに心配はなかった。
地蔵尾根に入ってすぐに、両側の切れ落ちた尾根が現れた。どちらにも転べないその尾根は特に慎重に通過した。
横岳が荒々しくそびえ立つ。
しばらくして、先行パーティーに追いつくと、なだらかな斜面を滑り降りようか相談していた。雪の状態しだいで、思いっきり滑ったら止まらないかもしれないと、私たちは心配してやりとりを見ていた。すると、そのメンバーの女性が滑り降り始めるではないか!心配をよそに、楽しそうに滑っていった。これは、私たちもと、続いて滑っていった。おまけに滑落停止訓練もできて、最初に勇気を出して滑り始めた人に感謝である。
行者小屋に着き、テント横の雪の中に隠しておいた白ワインを、山桜が飲み始めた。このときは、とても暖かく、足久保のほうが寒いと思った。
私も山桜からワインをもらい、暖かな陽を浴びながら、のんびり過ごした。夕食はチーズフォンデュとパスタ。行者小屋のテン場には水場があるので、水には困らない。2人ともお腹いっぱい食べたあと、シュラフにもぐりこみ休むことにした。
2日目の朝、テントを回収し、次なる目的地である温泉に向けて出発した。その時、1台のヘリコプターが阿弥陀岳の北西稜に救助のために近づいていった。ヘリコプターは1人を救助したようだった。雪山は油断できない。
行者小屋を後にし、下っているさいちゅう、山桜が雪道の歩き方に覚醒したようだ。「全然滑る気がしない!」たしかに安定した歩きをしていた。と、思いきや、最後の凍った道で激しく転び、腰を強打していた。そんな山桜を横目に笑いながら、この旅は終わったのだった。

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