沢組合の旅 2013年 1日目

2013年8月15日~16日柴沢への計画を立てていたが、休みが合わず、1泊で行ける沢を探していた。一緒に行こうと誘ったアカシさんも、負傷のため参加できなかった。そして、今回、沢組合が探し出した沢は、大間川支流、いくつかのすばらしい滝を有しているようだった。持ち物にクライミング装備を追加し、寸又温泉へ向かった。
観光客に混じり、大きなザックを背負っている違和感と共に、寸又温泉から飛龍橋へと歩いた。
飛龍橋から林道に入ると、自分たちだけになり、人の匂いから遠ざかって行った。重たい荷物と暑さを感じたが、これから始まる沢旅に期待は高まっていく。湯沢の温泉源を通り過ぎ、ゲートまで行った。
ゲートからの林道は、しだいに荒れていく。腐り始めた橋や崩れた道も出てくる。1箇所のガレたトラバースは緊張しながら通過した。
林道歩きの後半にコウモリの住むトンネルのあと、もう一つのトンネルがある。「あのトンネルの先は?」3時間の林道歩きもそろそろ終えたい気持ちになっていた。
トンネルを通り、腐って通れそうもない橋の所で斜面を降り、やっと入渓した。素晴らしい渓相のなか、ハーネスを装備し、ハーケン、ナッツ、ハンマーをぶら下げた。水の中が気持ちいい沢日和。きれいな水のおかげで心も洗われるようだ。
すぐに、ヒョングリの滝で有名な釜滝が現れた。登れそうな滝は登攀するつもりでいた。2段からなる釜滝の、1段目は右の壁を登れそうだった。しかし、2段目は水量も多く、厳しそうなので、あきらめて巻くことにした。
鉄道の橋を渡り、左岸巻きとなる。斜面を登ると、小屋跡があり、かまどが残っている。少し歩いた後、沢に戻る。
丸い釜のある10m滝に出た。「どうしよう?登ってみようかな。」と巻くつもりでいた私の横で、ツッチャンが滝を見ながら言った。沢を思いっきり楽しむ沢組合としては、ツッチャンのこの挑戦はありがたい!滝登攀は、ある意味、自然に対して真っ向から向き合う行為で、水の流れ、岩、コケ、木などの細部まで注意深く見なければならない状態になる。緊張感があり、同時に沢を深く知る。登れそうなラインを探し、登攀の準備をした。取りつきまで泳ぐが、その間に魚を探しながら行くのが、さすがツッチャン。
下部でシャワークライミングとなるが、ホールドはたくさんあった。安定したところでハーケンを打った。問題は、中間部の丸みを帯びた岩だ。ナッツをセットして、乗り越えようとするが、ホールドがなく、もう1手が出なかった。クライムダウンし、今度は、草付きのルンゼを行き、根っこでプロテクションを取り、登ることができた。荷揚げをして、セカンドで私も登るが、草付きの泥が滑りやすく、よくリードしたものだ!
滝の後は穏やかな渓相が続いた。今回、導入したゴーグルをつけて、最古の漁法であろう手づかみを、ツッチャンが試していた。滝登りの時、水しぶきでコンタクトが取れてしまいそうになるので、ゴーグルは必需品かもしれない。ゴルジュ泳ぎでも使えるだろう。
しばらくすると、巨岩帯に入る。岩をよじ登りながら進むと、15mの滝に出会う。二つに分かれて落ちる滝が、一つになる流れをしている。滝の右壁の弱点は、明らかだった。
1p目、荷物が重たいので、ハーケンで確実にプロテクションを取りながら私がリードした。ハーケンは打ち込みやすく、ハンマーを打つ金属音の高さに安心した。安心感からムーブにも自由が生まれる。終了点はハーケン2つで作った。
2p目、チムニーをツッチャンがリード。チムニーの上部から、左のスラブに行くが、ホールドがなく、クライムダウンしチムニーに戻った。このクライムダウンの時、足のフリクションが少しずつ変わっていく感覚に追い詰められたが、それでも冷静に処理した。セカンドで私が登るが、チムニーで滑り、まさかのフォール!大したことはないが、しばらく自信を失ってしまう。15m滝の後に西沢、本流の二俣となる。2日目を考え、上流へ行こうか迷うが、ここにビバークすることに決めた。ここで夕食のおかずを求め、私が西沢、ツッチャンが本流へと探しに行った。
西沢は木が多く、テンカラを振りにくかった。毛バリを木に引っかけイライラし、さらに乗った地面が抜け、転んだ際に左ももを強打!こういう時は、うずくまって痛みに耐えるしかない。すると、稲妻が光り、雷が鳴った。迫力のある音だった。しばらくして雨が降ってきた。急いで二俣に戻り荷物を取りに戻った。ツッチャンも戻ってきた。「釣れた後に、すぐ雷が鳴った」とツッチャンがアマゴを見せながら言った。たしかに、それは沢の主だった・・・。西沢で見つけたボロ小屋へ避難した。激しい雨の中、じっと待った。ボロ小屋でヒルに襲われるが、運よく小屋に落ちていた虫よけスプレーで退治できた。
小降りになったので、急いでタープを作った。沢の生活にも慣れてきたものだ。雨は止み、巻集めをして、夕食作りを始めた。
「頂きます・・・」アマゴの塩焼きを食べる前に、感謝の気持ちをこの言葉に込める。たき火を見ながら、旅を振り返ってのんびり過ごし、シュラフに潜り込んだ。 

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