北岳バットレス第四尾根 アルパインクライミング

クライミング講習の卒業山行である北岳バットレス第四尾根へと行ってきた。講習生として行ってから1年が経ち、今回は講師としてリードをすることになった。約1年の間で自分がどれほど成長したのだろうか?
前日に出発したクライミング講習Cチームといいタイミングで出会った。Cチームのみんなは仕事を成し遂げたいい顔をしていた。
登山道を離れ急な道に入り、大きな岩壁にたどりつく。すでに疲れ果て着いた行き止まりのような場所、そこがバットレスの入り口だ。
気持ちのいい青空はこの時までだった。頂上を目指し、リードするtoshizoさん、セカンドを行くQちゃんと講習生Sさん。
ガスの中、核心である垂壁に着いた。ここをリードできるか心配だったが去年の記憶を思い出しながら順番を待った。tosizoさんと、何人ものクライマーを育てたヴェテランFさんはうまくこの垂壁をリードした。緊張しながら自分の順番を待っていたその時・・・。講習生のKさんが、まるで天地がひっくり返ったように、さかさまにひっくり返った! ザイルパトナーのKngが「早く助けないと!」と叫んだ。突然の出来事にあ然としていた私はそのことばで我に返った。「待ってろ!リュックは落とすな!」となぜか叫び、登る準備を急いで済ませkさんをひっくり返した。
無事にkさんも登り、私も垂壁を越えた。次に待ち構えているものは「マッチ箱のピーク」といわれる大きな岩だ。ここの先端に立たなければ勇者とはいえない、逆にいえばこのピークに立てば勇者なのだ。ヴェテランのFさんが立っているあの地点がまさに勇者のピークだ。
Cチームと出会った時にすれ違いながらtunocciが「マッチ箱のピークは一番奥の終了点だ。そこで立たなければならない」とつぶやいた。一番奥の先端部分を目指し、そこに立つことができた。ガスのおかげで高度感はなかった。講習生のkngは余裕の表情で勇者のピークに立っていた。
第四尾根を登りきりビバーク地点に無事に着いた。そして食事を済ませのんびり過ごしていたのだが、勇者となるためにさらなる試練が私を待っていた。それは会長の石室で一晩を乗りきるビバークだった。勇者の試練にkngも乗る気だった。セルフビレイを何とか作り、狭い空間に寝る準備をした。初めは座るように寝ようと思ったが、眠れる感じではなかったので横になってみたものの、岩が背中にぶつかりいい体勢が見つからなかった。また、足の部分は風に当たり寒さを感じていた。
「朝まで闘いだ・・・」夜中2時ごろに目が覚めたkngがつぶやいた。寒さと背中に当たる岩のせいで寝たり起きたりを繰り返した。夜中に目が覚めたときは、満月に照らされた目の前に広がる雲海を眺めていた。静寂の中、太陽を待ち望んだ。そして、日が昇った。
夜明け前の暗く寒い時は終り、光と暖かさが始まった
北岳山頂へ行き、遠く続く稜線を歩きながら帰る旅の仲間。
稜線を離れ、バットレスに見下ろされながら雪渓の横を下った。kng、Fさん、Sさん、勇者の面構えだ。

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