「山上の楽園 鹿の平」
草原のような最高のロケーションだが、風の通り道となっていた。夜の間中、バタバタとテントを風があおり、何度も目が覚めた。外を覗くと雪がぱらついていた。2日目の朝、4:30に行動開始し、朝食をとった。明るくなり外に出ると(この時の寒さはつらい)草原の上には、夕べの雪がうっすらと積もっていた。
鹿の平に別れを告げる。いつも名残惜しい。
六呂場山へと続く尾根を降りるのだが、笹が深く、勾配が急坂だ。鹿の平のガレた淵沿いに行けば尾根が分かりやすいだろう。
アイゼンの必要のない少し積もった雪で、足元がどうなっているのか、分かりづらかった。ヤセ尾根では滑らないように慎重に進まなければならない。
見た目以上に道のりは長かった。−六呂場山− 山桜と来て以来、まさかの2度目の訪問だ。前回は水を求め、沢へと何とか降った。沢にたどり着いたが、そこで山桜が倒れ、緊急ビバークし、その後生還を果たしたのだった。
六呂場山からは、北方へ続く尾根を進んだ。ここからは初めての道だ。ところどころに赤テープがあるが、この道に足を踏み入れる人は、ほとんどいないだろう。深南部ならではの笹こぎが待っていた。
晴れ間が覗かれ、いい天気になると思ったが、私の期待は裏切られ、どんよりした暗い雲が覆われていった。笹のなかの獣道をひたすら歩いていた。
時間が来たので尾根上で昼食を取った。木にぶら下がっていた看板は朽ち果て、何が書いてあるのか解読はできず。山に入る前に買ったピザパンを食べる私を横目に、トシゾーさん、Qさんがなんと!おしるこを作り出し、それをおいしそうにすすっているではないか!?サクサクのピザパンは、悲壮感でいっぱいだった。
黒沢山手前の大きくガレた付近にやっと着いた。この笹こぎは、今回の旅で一番辛かった場面であった。長い道のりで疲れた体に、時おり、倒れている大きな木をまたぐときや、笹で足元が見えず、倒木の枝につまずいたとき。次に立ち上がる気力がどんどん失われていった。追い討ちをかけるように、降りつづける雪が、心までも暗くさせたのだった。
振り返ると、今まで歩いた道を見渡すことができた。「本当に自分が歩いたのか?」小さな一歩一歩が作り出した軌跡。
黒沢山の南を西方に進みが尾根が広くあせるが、テープはたくさんある。うれしいような、残念なような気持ちだ。シャウヅ山が見え始めたが、広い尾根は延々と続くように思われた。
シャウヅ山手前の広い尾根に雪の溜まったくぼみを見つけ、2泊目のテン場にしようと決めた。3日目にいい判断だったと分るが、風のないすばらしいテン場となった。
0コメント