安倍奥、白ん沢の大滝。沢ヤの世界では名の知れた滝である。要するに、この滝を落とさなければ、本物の沢ヤとは云えないだろう。不安と期待の募っていく感じは久しぶりだ。気合が入りながら、足久保のサークルKに集合し、いざ出発と、その時!私のジムニーがパンクしていた。tosizoさんの助けですぐにスペアタイヤに換え、有東木へ向かった。
白澤橋の横の林道を車で進んでいくと、独特な構造をした堤防に着いた。ここが出発地点となり、茶畑、わさび田を通り抜けていくと植林帯に入った。
わさび田の小屋前の切り株の上で、カモシカの頭達が出迎えてくれた。
白ん沢の大滝が狙いだったため、植林帯を長く歩いたが、やっとここで入渓することになった。
この沢の名のとおり、白い印象を受けた。すぐ隣の黒ん沢も名のとおり、黒い沢である。
両岸が狭まり影となり、前方に光が差し込んでいた。そこに白ん沢の大滝が見えた。
白ん沢大滝、下部は左側の滝をフリーで途中まで登りトラヴァースした。左岸に乗るために3mほどの壁を登る必要があったが、20mほど登っていたのでハーケンを打ち、ロープを着け登った。
下部を登りきり、大滝の全貌が現れ、近づいて滝を見ていると、なんだか登れそうな気がしてきた。滝の流れの右にあるルンゼに狙いを定め、
まずはtosizoさんがリードを始めた。ルンゼ内の核心部分でtosizoさんの動きが止まった。そこで落ちたらまずいと思い、tosizoさんを呼び、ハーケンを打てないか合図を送った。セカンドで登るときにわかったのだが、よくこんな所に打てたな、という難しくもそこにしかない所にハーケンが打ち込まれていた。カムもうまく使い、大滝の中段をtosizoさんがリードで登りきった。
Qさんは身軽に登っていた。100mの大滝、結構な高さだが、落ち着いて登るQさんはすごい。
次に私がリードで、草付きを巻きながら左岸を登った。すると、嫌な岩壁にぶち当たった。そこでピッチを切り、みんなを上げ相談した。滝を覗きに行ったtosizoさんによると、なんとか登れそうだとのこと。前方の岩壁か、それとも滝に戻るか?どちらにしろ安全な保障は無かった。リードを申し出た私は、悩んだ末、滝に戻る道を選んだ。滝の水しぶきを受けながら、ハーケンを決めていった。ルートは意外と長くヌンチャクが足りなくなってきた。また、冷たい水による精神的な疲れに、あせりと不安が忍び寄ってきた。あと3m・・・、滝の落ち口が見えた。その時、ふと、後ろを振り返ってしまった。100mの斜面を滝が勢いよく落ちている。ここで落ちたらどうなるだろう?突然、恐怖に息が詰まった。「考えろ」自分にいい聞かせ、ナッツに手をかけた。小さなサイズのナッツを決め左手を伸ばしホールドに指を掛けた。ヌルッとコケに滑ったが、ナッツを信じ、そのまま乗り込んだ。「助かった!」白ん沢大滝を登りきった。tosizoさんとガッチリ握手を交わした。このリードの難しさをよく分かってくれていた。
大滝を終え、しばらく進むと山が崩壊した場所にでた。広い範囲での崩壊だった。この場所で何が起きたのだろう?
長い藪漕ぎを覚悟していたが、意外なところでいい道を見つけた。その道を辿り、車をデポした葵高原に行くため、ひたすら斜面をトラヴァースした。葵高原の近くになんとか降り、この冒険が終わった。
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