2012年12月9日地蔵峠へ向かう途中に見える、安倍奥・岩岳の稜線に突き出た岩を、以前から気になっていた。その話をshuが焼き鳥屋じゅんちゃんでしたところ、ニールさんも見てみたいと興味を持ったようだ。ならば、その岩を探しに行こうと探索隊が結成された。
正木峠まで車を停め、歩き出した。荷物の中には、カム、ナッツ、ハーケン、ロープと岩を見つけたら、登る気満々の装備でいっぱいだった。寒波で雪が降っていたので、どうなるものか、心配ではあったが、今回のパーティーはみんな元気のあるメンバーばかり、ポリーとリリーも楽しそうに走っていた。
地蔵峠目指して、少しずつ標高を上げると、木々の切れ間から、目的の突き出た岩が見えてきた。
笹でいっぱいに覆われた斜面に、大きく突き出た岩は、山道からはとても目立つ。しかし、稜線を歩くと、2mの笹に視界は狭まれる。前回、岩岳を通過したときに探してみたが、藪漕ぎをしていると、どこに向かっているのかすぐに分からなくなり、結局、見つからずに終わってしまった。
ハイキング気分のつもりが、山の中は意外に雪が多く、アイゼンはまだ必要なかったが、凍りかけた部分もあった。今回の旅の仲間は、私、アカシさん、ニールさん、サトさん、キョウコさん、シュウ、ポリー、リリーで、女性陣のサトさんは北海道出身、キョウコさんは昔、山を歩いていたし、ニールさんと小川山へもよく行っているので心配はなかった。むしろ、楽しんでいる姿に、探索隊を明るい雰囲気としてくれた。
地蔵峠から進路を北へ取った。道の伸びる南向きの斜面は、日が当たっていたので、雪は溶け、暖かくなった。振り返ると、青笹山へ続く道が、雪のおかげでよく映えた。さらに南を眺めると、山々の向こうに、駿河湾の海が日に反射して白く光っていた。
尾根が広くなり、岩を包むように生える木のある場所にでた。ここは、いつ来ても不思議な雰囲気、自然の造形に畏敬の念を持つ。
私は高度計と地図、シュウは携帯のGPSで、予想地点を調べていた。目的の大岩に近づいていた。左の藪の中へいつ突入するか、そろそろだぞと話していると、先を行くアカシさんが、「あったぞー!」と雄叫びが聞こえた。「アカシさんどこー?」と叫び返すと、藪の中からアカシさんの拳が見えた!見つけた岩は、大岩ではなかった、が、さらに先を西側に藪漕ぎをしていき、
藪から出るために岩の上に立つと、ここが探していた岩だとすぐに分かるような、光景が広がった。今まで、背よりも高い藪のおかげで、風から守られていたが、途端に冷たい風が吹き付けてきた。一気に体感温度は下がっていくが、岩を見つけた興奮から、しばらくその場を動けなかった。
やがて、興奮よりも寒さのほうが強くなり、長居はできそうもないので、急いで岩に近づこうと、笹の中を慎重に下っていった。ポリーもここまで来るが、女性陣といつの間にか、いなくなっていた。
岩は突き出ていたと思っていたが、岩のてっぺんは尾根となり、山の斜面とつながっていた。
シュウとアカシさんが次第に低くなる笹を、切れ落ちている両側へ滑らないように進んでいき、岩の頂上に立った。急斜面を、風になびく笹が草原のように広がり、眼下には点在した村が見える。岩自体は15mぐらいか、しかし、山全体を含めると、この高度感はこのクライミングにすばらしい味付けになるだろう。アカシさんは寒さに耐えきれず、震えながら、登山道へと戻った。
岩の取り付きまで行くには、急な斜面を下らなければならない。ニールさんとシュウは寒さに負けずに、なんとか岩の下まで行こうと、道を探していた。私は、アカシさんと登山道へ避難しようとしたが、持ってきたダウンを着込むと、暖かくなり、徐々に士気を取り戻した。ニールさん、シュウに遅れて、岩の下まで滑りやすい笹を、木の枝を頼りに降りていくと、取り付きには十分なスペースが岩の下にあった。「リングボルトがないな・・・」岩を見上げながら、ニールさんが、うれしそうにつぶやいていた。岩の近くに、古い空き缶を見つけたのだが、何のためにここに来たのだろう?左面のニールさんが見上げた壁は、スラブとフェイス、そして右斜めに伸びる細いクラックが横切っていた。西側のカンテは、ハングの続くおもしろそうなルート。右面は、フィストのクラックが斜めに伸び、その上は確認できなかった。フリクションが良さそうな岩質で、何よりも、笹の中に飛び出た岩なので、さえぎるものがなく眺めは最高だろう。
岩をじろじろ観察して、登山道に戻り、パーティーに合流した。岩岳山頂を確認してから、寒いので、地蔵峠まで戻ることにした。大岩へのアプローチは、岩岳山頂手前(南)を左へ(西)藪の中に入り、10mほど。
地蔵峠でカップラーメンを食べ、一息ついて下山した。下山後、焼き鳥じゅんちゃんに集結し、この新しいプロジェクトについて話し合った。まずは沢口沢の開拓と、掃除。それから岩岳の岩開拓が、私たちを待っている。
0コメント