今年の夏は、沢組合で大井川・赤石沢へ!前夜泊のため、畑薙ダムへ夜に向かった。井川に入る手前のことだった。ライトをつけたままの車から親と子供が降りて道をふさいでいた。よく見れば、岩が道の真ん中にあり車が通れない。おそらく落石したばかりだろう。後ろから次々と車が詰まってきた。数人で岩を動かそうとするがまったく動かず、ツッチャンが荷物を止めるベルトを車につなぎ、岩を引っ張るがベルトは切れてしまった。テコで動かそうと、木を探しに行くと落石注意の看板が崖に落ちていた。それを拾い上げ、なんとか岩を動かすことに成功した。職人ばかりの沢組合だが、みんな頼もしい!(私は石鹸職人)ただ、あまりいい前兆ではなかった・・・。
なぜ今回、赤石沢を選んだのかというと、リニア新幹線のトンネルの影響が出る前の状態で大井川上流の名渓を見ておきたかったからだ。しかし、遡行日程の少し前に台風が通過。さらに台風一過後に雨が降った・・・。増水した沢の水がどのくらい引いているか?畑薙ダム臨時駐車場から、7時過ぎの2便目のバスに乗ることができた。牛首峠で降りる時、バスの運転手が「この水量でも沢登りに行くのかね?」と聞いてきた。様子を見ながら、行くだけ行ってみると運転手に伝えると「気をつけな」と念を押された。
興奮を抑えながら入渓するが、うれしさは束の間、水の冷たさにうろたえた。それでも、淵を泳いで対岸へ渡らなければならない。
平水時の赤石沢を知らないが、水量は多いだろう。水流の強さは圧倒的。沢を進めず、巻くことも多々あった。
次々と現れる淵のスケールがどれも大きく、どう進むかとても悩まされた。
白濁して沢の底が見えず、へつりも困難だった。重い荷物と緊張から、両膝の上のあたりが攣ってしまう時もあった。スケムネさんはへつりで足をくじいてしまった。翌日腫れた足首には驚いた。「よくそれで遡行できたな・・・」
ゴルジュに逃げ場がないことを実感。水量のわずかな差で沢の様子は変化するのだろう。沢も一期一会。
巻くことができず、渡渉しなければならない場面に出くわした。しかし、流れが強く渡渉をためらっていた。そこで、ツッチャンがハンマー投げを思いついた。ロープの先にミゾーのハンマーを結ぶ。まるで鎖鎌のようだ!
対岸の石の間にハンマーを引っかけることに成功し、ハーケンで支点を取りビレイの準備をした。そして見事、ツッチャンが激流を渡渉!
天気は曇りで沢の中はとても寒かった。それでも、淵は終わることなく現れ、水の中を進むしかなかった。
巨岩がごろごろしている。沢の迫力に飲み込まれてしまう。
神の淵についた。
神の淵も危険な感じがしていた。よく見てルートを探すが、流れの強さに想像しがたい。すると、「おれが行きます!」とスケムネさんが楽しそうに申し出た。ロープをつけ、激流の向こうへスケムネさんが飛び込む。無事対岸へ渡り、少しハングした岩を乗り越えた。見ている私たちが安心したその時、スケムネさんが滑り落ちた。そのまま、激流に流され、下の淵に飲み込まれたように沈んで出てこない!急いでロープを引き、スケムネさんを救出した。代わろうかと思ったが、すぐにスケムネさんがリード開始。そして、今度は落ち着いてクリアした。「くそ~、オンサイトを逃した!」とスケムネさん。
へツリ、巻き、泳ぎ、渡渉で時間がかかり、目的のビバーク地に届かないと判断し、巨岩帯の前でイワナを釣ることにした。ここはルアーのツッチャンとスケムネさんに任せ、私は先を偵察に行った。巨岩帯前のゴルジュが、見た感じでは無理そうだったので、左岸を巻いた。水量がもう少し少なければ、小さい右岸巻きで済むと思うが、仕方なく選んだ左岸巻きはきつかった。ちょっとしたピークに出る。その後、懸垂下降でやっとビバーク可能な場所に出た。取水口手前の広河原、長いゴルジュだった・・・。
今晩の夕食のためにイワナを短い時間で釣り、タープを設営したき火を始めた。料理長のツッチャンが、イワナの天ぷらを作ってくれた。
さらに、ヨモギの天ぷら、イワナの串焼き。
イワナ炊き込みごはんとイワナ汁。
骨酒の焼き枯らし。厳しい1日だったので、この日の食事は特別なものだった。あのイワナの串焼きの味は、めったに食べることはできないだろう。沢の恵みに感謝。
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